看護師によるエンゼルケアの意義と目的

看取りの看護など終末医療が多様化する中、医療現場ではエンゼルケアをおこなう意義が高まっている。それにともない、看護師にとってエンゼルケアの知識は必要不可欠なものになりつつある。昔から日本人には死化粧や湯灌など故人の身体を清める風習があった。その行為は患者の尊厳を守り、送り出す家族にたいしての配慮を目的としたものであった。その後死後の処理が一般的なものとされ、看護師によって家族とともにケアとしておこなう死化粧、エンゼルメイクが提唱されたのだ。

現在の医療現場でのエンゼルケアは、感染予防が目的の一つとしてあげられている。死後、人の体からは創傷や注射跡、医療器具をはずした鼻腔や口腔から血液や体液が流出する可能性がある。嘔吐物や排泄物の処理が必要な場合もあるだろう。そういったものからの感染を防ぐことを目的とし、エンゼルケアが施される。また、家族とおこなうエンゼルケアは、家族の苦悩や悲しみを緩和するグリーフケアも目的としている。家族にとって、患者の清拭をし着替えをさせる行為は患者の死と向き合う時間になる。

エンゼルケアによって生前の姿に近づけることは、患者を病気による苦しみから遠ざけ安らかな死が迎えられたという状況を作ることでもある。家族が患者の死を受け入れやすくするのだ。また、きれいな姿にすることは、患者の尊厳を守ることにもつながる。適切なエンゼルケアを医療現場でおこなうことは、家族からの医療関係者に対しての評価が向上するとも言われている。近い未来、エンゼルケアは病院の信頼の構築に重要になるかもしれない。